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QCARD
Qカード -病態把握能力向上ゲーム-

個数:
Qカード
-病態把握能力向上ゲーム-

[ 監 修 ] 畑中 哲生
[ 編 集 ] 湖南広域消防局
[ 発行年 ] 2022年2月1日
[ 分 類 ] 救命・救急医学
[ 仕 様 ] A4判 20頁(付録付き)
[ 定 価 ] 3,850円(税込)
[ ISBN ] 978-4-907095-69-7
[ 主な内容 ]
●ゲーム感覚で楽しく遊ぶユニークな教材が誕生!!
●①症状、②検査所見、③既往歴・リスク、④次に起こること、⑤観察・処置の5種類のカードを使って病態把握能力を向上させよう!!


フィールドマットがここからダウンロードできます。
プリントしてお使いください。ラミネートがお薦めです。

監修のことば

 傷病者の病態把握は救急隊活動の基本骨格である。必要な処置は何か…酸素投与? 補助呼吸? ショック体位か頭高位か? 輸液? ? その処置はどこで行うか…今すぐに? 救急車を出発させた後で? ? 搬送すべき医療機関はどこか…救命救急センター? 直近の脳外科対応2次医療機関? ? 備えておくべき搬送中の突発事態は何か…。これら救急隊に求められる判断の重要な基準となるのが傷病者の病態である。
 このように重要な病態把握であるが、病院前で行うのは大変に難しい。情報量が限られているうえに、厳しい時間的制限があるからである。救急現場で得られる情報のうち、他覚所見としては救急隊員の五感に基づくABCのほかに、血圧、SpO2、心電図と視診・触診・聴診の所見と、いくつかの身体検査に基づく所見がせいぜいである。病院の診察室で得られる血液・超音波・画像検査の情報量にははるかに及ばない。
 いきおい救急現場では主に問診(できれば傷病者本人、難しい場合は状況を知る関係者)から得られる情報…、すなわち発症の経過、既往歴とその治療状況、現在の自覚症状の性状などが病態把握のための重要な助けとなる。そもそも患者への問診は病院内の診療においても最も重視される診断過程である。しかし、悲しいかな病院前ではその重要な問診をじっくりと行うほどの時間的余裕はない。使える時間はせいぜい90秒くらいだろうか。焦点を絞った問診の技術が必要となる。
 要領を押さえた問診と手際よい観察によって病態把握に至るには、個々の情報をいかに連関させるかにかかっている。1つの情報に基づいて、次に必要となる情報を吟味し、それを明らかにするための問診・観察を追加する。これは複雑なパズルを解くような作業ともいえる。
 この技能を、若者ならではの自由な発想の“ゲーム感覚で楽しく学ぶ”ためのユニークな教材が、この「Qカード」である。ゲーム形式とはいえ、勝つこと、相手を打ち負かすことが目的ではない。まったくの初学者だけで完結できるものではないが、指導者が学習者をより高い技能に導くためには優れた教材となっている。互いに切磋琢磨しながら、指導者も学習者も自分自身が何がわかって何がわからないのかを再認識することもできる。
 ともすると、若いエネルギッシュな感性から生まれた発想は、型どおりではないとか、慣例とは違うなどの理由で排除されてしまいがちだが、今回の企画は、若者の新たな発想に湖南広域消防局の消防局長をはじめ、救命救急課長等々が共感し、見守り、育て、導こうとする懐の深さがあったからこそ誕生したといえる。年齢に関係なく、柔軟な発想に対応できる感性を磨くことが未来につながっていくのだと。
 「Qカード」が今後、多くの方々の馴染みの教材として愛されていくことを切に希望する。
   2022年1月吉日
救急振興財団救急救命九州研修所 教授 畑中 哲生

序文

 湖南広域消防局では、救急業務に携わる職員教育の一環として、指導救命士が中心となり救急業務研修を実施しています。その中で、現場経験や医学的な知識量に個人差があることから、この状況を解決するため、傷病者の病態把握や効果的な情報伝達内容をゲーム感覚で学ぶことができる教材として「Qカード」を考案しました。
 この「Qカード」が、病院前救護にかかわる消防職員を含む医療従事者の教育、研修教材として広く活用され、救急業務のさらなる質の向上に寄与できればと願っております。
   2022年1月吉日
湖南広域消防局 消防局長 行村 浩一

まえがき

「わからんことあれば聞くこと」「テキストを見て勉強すること」
 消防に入って間もなく、先輩からよくこんなことを言われました。しかし、自分自身、何がわかっていないのかを理解しなければ具体的な疑問が生まれるわけはなく、何を勉強すればいいのかさえ明確にわかっていませんでした。そもそも疑問とは、経験を積み、物事の良し悪しを判断する材料が増える中で、想定外の価値基準が発生したときに生まれるものであり、経験値のないときに疑問は生まれるはずがありません。
 経験をより効果的な学びに変換するためには、それをどんな場面にでも応用がきく形に整理することが必要になります。しかし、救急出動件数の増加や処置拡大等における救急活動の複雑化により、具体的な経験を内省する時間は減少していることから、時間と労力のかかる教育方法だけでない、効果的かつ効率的な方法で隊員を育成しなければならない時代だと考えました。
 病院前救護で活動する救急救命士に求められる能力は、大きく次の2つです。
 ① 傷病者の生命の危険を回避し、容態の悪化を防ぐこと
 ② 迅速に適切な医療機関へ搬送すること
 これらの目的を達成するために必要な能力の1つとして「病態把握能力」があります。救急隊は、限られた人員や資器材の中で活動しており、医療機関に比べると病態の把握については曖昧な部分を抱えながら活動しなければならない特性を有しています。また、搬送が主たる任務で、迅速性が求められるため、多くの知識の中で関連性のある形や組み合わせができるよう整理しておく必要があります。
 われわれは、テキストを開き日々勉強するわけですが、これがとにかく面白くありません。面白くないので、ついついスマートフォンを触る時間の方が多くなったり、挙げ句の果てに眠くなったりすることも…。では、なぜこうなるのでしょうか? 答えは至ってシンプルで、楽しくないから続かない、これもまた当たり前です。
 続けるためには楽しさが必要です。楽しさには「遊び」の要素が存在します。とはいえ、“遊び半分”という揶揄する言葉があるように、遊びは仕事に比べると重要度が低い印象がありますが、遊びの要素こそ続けるための「自律的行動」につながると考えます。それは次の3要素が含まれるからです。
 ① 結果がどうなるかわからないという不確実性
 ② 自分の力である程度結果に影響を与えられるというコントロール性
 ③ 繰り返し行っても、結果によって得られるものが常に違う変則性
 例えば、宝くじは①と③の要素は備わっていますが、②の要素がありません。一方、麻雀やカードゲームなどはこれらの条件をすべて満たしています。
 結果が不確実かつ変則的でも、自分の力を加えることで結果にある程度の影響を与えることができ、ゲーム性を兼ね備えた、チーム全体で楽しく学べる研修教材があればとの思いから考案したのがこのQカードです。Qカードの真髄は「遊び感覚で学ぶ」です。自律という無限の原動力を動かすための起爆剤として「遊び」を取り入れました。
 時代は刻々と変化しています。昨日の常識は明日の非常識とまではいかなくとも、これからは従来どおり、例年どおりでは通用しないことも多くなってくるでしょう。常識に囚われることなく、時代の変化を読み、時代に即したやり方を模索しながら、必要に応じて修正を加えて実行する。これこそが指導救命士の果たすべき責務でもあると私は考えます。
   2022年1月吉日
湖南広域消防局 指導救命士 片山 直広


目次


1 Qカードとは
2 セットの内容
3 カードの種類
4 ゲーム参加対象者・人数
5 対戦方法(ルール説明)
6 禁 忌
7 勝利の条件
8 注意事項
9 上がり方のコツ
10 予備カード
11 学習効果
12 今後の展望





2024年10月 新刊追加