移植・輸血検査学
改訂版
[ 監 修 ] 一般社団法人 日本組織適合性学会 編集広報委員会
[ 発行年 ] 2024年9月12日
[ 分 類 ] 臨床検査 移植・人工臓器
[ 仕 様 ] B5判 本文331頁
[ 定 価 ] 7,700円(税込)
[ ISBN ] 978-4-907095-90-1
[ 主な内容 ]
●初版から20年を経て、最新の知識と知見を加えブラッシュアップ
●初版の1.5 倍のボリュームでオールカラーに刷新
●MHC・HLA の初学者をはじめ、検査実務や高等教育、移植医療・輸血医療に携わり、日々研鑽を積む医療者必携の書‼
移植・輸血検査学の初版は2004年3月に刊行された。当時は輸血や移植を考えるうえで必要不可欠な主要組織適合性遺伝子複合体(major histocompatibility complex;MHC ヒトではhuman leukocyte antigen;HLA)を学ぶに適切な教科書・読本がなかったことからの企画・出版であったが、その後現在に至るまで、MHCを体系的に学ぶための参考書はほとんど刊行されていない。
MHCは移植(臓器移植、造血幹細胞移植)医療や輸血医療にかかわるのみならず、その著明な多様性故に遺伝学の研究対象ともなり、また自己免疫疾患のみならず、感染症やがんを含む疾患における免疫応答の個体差形成において重要な役割を果たすことから免疫学の新たな研究対象ともなっている。昨今では、iPS細胞を利用した研究も進んでいるが、その樹立や応用においてMHCは考慮すべき必要不可欠な因子となっている。
このように、移植・輸血検査学をめぐる関連領域においては学問の進歩が著しく、一般社団法人日本組織適合性学会の会員の皆様を中心とする本書の利用者より、最新知識を盛り込んだ改訂版の出版を求める声が多く届いていたことから、この度、編者・執筆陣の構成を大きく変更し、関連領域において重要な最新知見を加えるための加筆・改訂を行った。初版では教科書としての使用が主たる目的に置かれていたこともあり、学問的に確立したことを中心とする編集方針であったが、それでは時代の先端を行く学問領域の1つである移植・輸血検査学の進歩にはついて行けず、早晩色あせた知識となってしまうとの危惧感もあり、最新の確立された知見も加えるとの編集方針を立てたうえでの改訂版である。
改訂版は企画から約1年で発刊を迎えたが、初版と同じく8章構成とした。また、初版は約240頁の単色刷りの体裁であったところ、改訂版はその約1.5倍の約330頁と内容も充実し、加えて多色刷りとすることで視認性の向上を図った。さらに、執筆者・編者による検討に加えて、一般社団法人日本組織適合性学会編集広報委員会の委員による監修を行うことで、記述のわかりやすさを心がけるとともに、内容のさらなる精度向上を図ったものである。
MHC・HLAの初学者から、検査実務に携わる方々、高等教育に携わる方々、そして移植医療・輸血医療に携わる方々には、是非とも座右に置いて、少しでも疑問に思ったことがあった際には本書を開いて知識の習得や再確認を行って頂きたいと願うばかりである。
最後に、本書の企画から完成まで粘り強くご対応頂いた株式会社ぱーそん書房の山本美惠子様、近野さくら様に深謝致します。
令和6年9月吉日
編者 木村 彰方・湯沢 賢治・中島 文明・
岡崎 仁・一戸 辰夫・徳永 勝士
Ⅰ 移植・輸血学の概要
1 輸血と移植の歴史
1.輸血の歴史
2.移植の歴史
3.主要組織適合抗原の歴史
4.輸血と移植
2 組織適合抗原と血液型
1.マウスの組織適合抗原
2.ヒトの組織適合抗原
3.ほかの動物種の組織適合抗原
4.血液型
3 免疫機構
1.自然免疫
2.獲得免疫
Ⅱ 組織適合抗原
1 HLAの概要
1.MHCとHLAの関係
2.HLAとワークショップの歴史
3.HLA分子の種類と構造
4.HLA遺伝子群の種類と構造
5.HLA分子の発現様式と機能
6.HLA抗原・遺伝子の命名法と表記法
2 HLAクラスⅠ系
1.HLAクラスⅠ分子の種類と構造
2.HLAクラスⅠ遺伝子群の構造
3.HLAクラスⅠ分子の機能
4.HLA クラスⅠ遺伝子の多型性
5.HLA クラスⅠ関連分子の種類と構造
6.HLA クラスⅠ関連分子の遺伝子の種類と構造
3 HLAクラスⅡ系
1.HLAクラスⅡ分子の種類と構造
2.HLAクラスⅡ遺伝子群の構造
3.HLAクラスⅡ分子の機能
4.HLA クラスⅡ遺伝子の多型性
4 HLAハプロタイプと連鎖不平衡
1.ハプロタイプ
2.連鎖不平衡
3.ハプロタイプブロック
5 マイナー組織適合抗原
1.マイナー組織適合抗原の定義
2.造血幹細胞移植におけるマイナー組織適合抗原
3.抗腫瘍反応の主たる標的分子
4.臓器移植におけるマイナー組織適合抗原
Ⅲ 血液型
1 血液型の概要
1.血液型の種類と抗原構造
2.血液型分子の機能
2 ABO血液型
1.ABO血液型とラントシュタイナーの法則
2.ABO血液型の抗原構造と遺伝子
3.ABH抗原の分泌型と非分泌型
4.ABO血液型の変異型
5.ABO血液型抗体
3 Rh血液型
1.Rh血液型の命名法と表記法
2.Rh血液型の遺伝子と抗原構造
3.Rh血液型の変異型
4.Rh抗体
5.母児免疫(胎児・新生児溶血性疾患)
4 その他の血液型
1.MNS血液型
2.P1PK血液型、GLOB 血液型
3.Kell血液型
4.Lewis血液型
5.Duffy血液型
6.Kidd血液型
7.Diego血液型
8.I血液型
9.その他の血液型
5 血小板抗原
1.血小板抗原の構造と遺伝子
2.抗血小板抗体による病態
Ⅳ 検査の原理
1 HLA遺伝子検査
1.HLA遺伝子検査の対象と目的
2.核酸抽出法
3.PCR法
4.各種のHLA遺伝子検査法
5.PCR-SSO法
6.PCR-SBT法
7.NGS法
2 抗HLA抗体検査
1.リンパ球細胞傷害試験
2.フローサイトメトリー法
3.蛍光ビーズ法
3 細胞学的検査
1.混合リンパ球培養検査(MLC)
2.PLT検査
4 血液型抗原検査
1.ABO血液型検査
2.Rh血液型検査
3.自動輸血検査装置による検査
5 血液型遺伝子検査
1.ABO血液型遺伝子検査
2.Rh血液型遺伝子検査
6 不規則抗体スクリーニングと交差適合試験
1.不規則抗体スクリーニングと交差適合試験の概要
2.生理食塩液法
3.酵素法
4.間接抗グロブリン試験
5.分子標的治療薬の対処法3
7 血小板抗原検査
1.血清学的検査法
2.遺伝子検査法
Ⅴ 移植医療
1 移植の概要
1.移植の用語
2.移植の種類
2 移植免疫
1.拒絶反応
2.拒絶反応の防御と治療
3.移植片対宿主病
3 臓器移植
1.腎移植
2.心移植
3.肝移植
4.その他の臓器移植
4 造血幹細胞移植
1.同種造血幹細胞移植の治療原理
2.移植前処置と移植片対宿主病予防
3.移植細胞ソース
4.骨髄バンクと臍帯血バンク
5.造血幹細胞移植における組織適合性
Column・HLA適合性が造血幹細胞移植後の
NK細胞免疫応答に与える影響
5 免疫療法
1.免疫療法の原理
2.能動免疫療法
3.受動免疫療法
Ⅵ 輸血医療
1 輸血の意義
2 血液製剤
1.血液製剤の種類と保存方法
2.保存液の種類と組成
3.血液製剤の供給と安全性
4.供血者の採血基準
5.法令およびガイドライン
6.血液製剤の種類と適応
7.自己血輸血
8.手術時の血液準備方法
9.アフェレーシス
3 輸血後副反応
1.溶血性輸血副反応
2.輸血感染症
3.非溶血性輸血副反応
Ⅶ HLA研究の広がり
1 ヒトゲノム多様性の概要
1.多型とは
2.遺伝子多型の種類
3.さまざまなゲノム多様性
2 HLAと疾患
1.自己免疫疾患
2.感染症
3.腫 瘍
4.その他の疾患
5.疾患とHLA遺伝子の多型に関連が見い出されるメカニズム
3 法医学への応用
1.親子鑑定と父権肯定確率
2.個人識別
4 集団遺伝学との関連
1.血液型頻度の集団差
2.HLA 型頻度の集団差と人類集団の類縁性
5 HLAの医学応用の将来
1.腫瘍免疫とがん免疫療法
2.ゲノム医学の将来
Ⅷ 移殖・輸血検査学実習
1 HLA遺伝子検査
1.DNA抽出
2.PCR増幅
3.PCR-SSP法
4.蛍光ビーズ法
5.PCR-SBT法
6.NGS法
2 抗HLA抗体検査
1.リンパ球細胞傷害試験
2.フローサイトメトリー法
3.蛍光ビーズ法
3 輸血検査
1.ABO血液型検査
2.ABO血液型亜型検査
3.RhD血液型検査
4.不規則抗体スクリーニングおよび同定検査
5.交差適合試験
4 抗血小板抗体検査
1.混合受身赤血球凝集法(MPHA法)
移植人生のための
患者・医療者マニュアル
[ 監 修 ] 一般社団法人 日本移植学会 医療安全委員会
[ 発行年 ] 2024年9月12日
[ 分 類 ] 移植・人工臓器
[ 仕 様 ] B5判 本文298頁
[ 定 価 ] 6,600円(税込)
[ ISBN ] 978-4-907095-91-8
[ 主な内容 ]
●移植患者と医療者の絆を深めるための座右の書!
●移植人生とは? 医療チームとの二人三脚で歩むための要点をわかりやすく解説
●ドナーやレシピエントの本音を「コラム」「インタビュー」に記載!
●臓器移植にかかわる医師、看護師、コーディネーターなど、医療従事者必携の書‼
「移植人生 Transplant Life」とは、私が移植された多くの患者さんと出会い、これまで長く寄り添いながら診てきた経験の中で自然に生まれた言葉です。おそらく本書が最初に使っている言葉だと思います。
移植を受ける患者さんたちは、移植日である第二の誕生日に移植人生の旅に出ます。患者さんはその切符を贈っていただいたドナーさんに心から感謝し、その後の人生が実りあるものになることを念じて出発します。
移植後は、学校に行ったり働いたり普通の社会生活を送っていきますが、同時に、拒絶、感染症、腫瘍などの予防と治療、他臓器の管理について、医療チームと二人三脚で、健康的な移植人生を築いていきます。
わが国における移植患者さんの末永い健康を願い、患者さんと医療者の絆をより強くするための座右の書としてまとめました。患者さんをはじめ、読者の皆様に少しでもお役に立てますことを心より願っております。
本書は、各臓器移植のエキスパートばかりでなく多くの方々から多大なご協力を頂きました。山梨大学医学部教授の荒神裕之氏には、患者と医療チームの絆のための医療メディエーションの重要性についてご指導頂きました。ぱーそん書房の山本美惠子氏には類を見ない本書の上梓に献身的な努力を積み重ねて頂きました。
ありがとうございました。
2024年9月吉日
「移植人生のための患者・医療者マニュアル」編集委員長
一般社団法人 日本移植学会 医療安全委員会 前委員長
東京女子医科大学 特任教授
布田 伸一
総 論
1. 移植人生における患者と医療者の相互理解
移植待機前から移植後慢性期に至る長期間の
医学的管理
相互理解における行き違いへの対応
移植医療におけるNBMの重要性
2. 移植人生における医療メディエーターの役割
わが国における医療メディエーターを取り巻く状況
移植医療における医療メディエーターの展開
移植人生を支える医療メディエーター
コラム グリーフケアとは
3. 救命救急医からみる臓器提供現場への想い
患者自身の想い
患者・家族の支援
臓器提供の選択肢の提示
臓器提供のプロセス
コラム 救急現場での救命救急医の本音
4. JOTドナーコーディネーターからみる臓器提供現場
への想い
ドナーコーディネーターの必要性
臓器提供プロセスと関係機関との連携
ドナーコーディネーターによる家族支援
コラム ドナーコーディネーターの涙と笑顔
5. 地域医療における臓器提供
臓器提供とは
地域における臓器提供の事例
臓器提供にかかる対話
6. 脳死下・心停止後臓器移植待機中の患者と医療者
の信頼構築
わが国における脳死下臓器移植の現状
長い待機期間の苦悩(具体例)
7. 脳死下・心停止後臓器移植後の患者と医療者の
信頼構築
移植後の身体的側面
移植後の精神的側面
信頼構築
小児期に心臓移植を受けた具体例
8. 生体腎移植前におけるドナー・レシピエント・
医療者の信頼構築
腎代替療法選択のジレンマ
生体移植における意思決定プロセス
信頼構築についてー医療サイドから思うこと
言いにくいが言わねばならないこと
9. 生体腎移植後におけるドナー・レシピエント・
医療者の信頼構築
相互理解を阻む「溝」
「溝」を埋める説明方法
EBMとNBM
生体ドナーとの「溝」
それぞれの段階での留意点
10. 移植患者のこころの変遷
移植まで
「移植」という言葉
待機期間
周術期
社会復帰
その後の人生
11. 移植医療における精神科リエゾンの役割
移植前に行われる精神科リエゾンによる精神・
心理面の評価
臓器不全や移植に関連して生じる精神障害への対応
アドヒアランスへの対応
12. 医療ネットワークによる患者と医療者の相互理解
移植前における医療ネットワークの必要性
移植後における医療ネットワークの必要性
患者会、患者同士のネットワーク
13. 地域における遠隔医療ネットワーク
遠隔診療の実際
北海道における遠隔医療の取り組み
14. 小児移植医療におけるネットワーク
デジタル化で実現する質の高い移植後の管理
病院(医療者)間のネットワーク
病院(医療者)と患者をつなぐネットワーク
患者と患者(社会)をつなぐ医療ネットワーク
ーSNSの活用
医療ネットワークの課題
15. 小児移植医療とチャイルド・ライフ・スペシャリスト
小児臓器移植医療のさまざまな状況
「選ぶ」「待つ」「つなぐ」を支える
きょうだい・家族との「つながり」を支える
移植人生を支える
移植とともにある希望を支える
16. 小児における終末期、移植時の注意点、アセント方法
子どもの権利
話し合いのあり方
チェックリスト
話し合いの実際
コラム 小児移植における移行期医療(トランジション)
コラム イスタンブール宣言の本意と移植ツーリズム
コラム 外来受診心得のヒント
各 論
1 心臓移植
1. 移植前における移植実施施設と非実施施設の連携
心臓移植の適応となる患者の紹介
移植待機中の移植実施施設と非実施施設の連携の工夫
アドバンス・ケア・プランニング、意思決定支援
具体例
2. 移植後における移植実施施設と非実施施設の連携
免疫抑制薬
感染症
日常生活
服薬の注意点
栄養および代謝異常
悪性腫瘍
具体例
3. 移植人生における患者と医療者の相互理解
移植実施施設への紹介~移植の適応に至るまで
移植実施施設での診療開始~移植の適応検討に至るまで
心臓移植待機から移植手術、そして退院まで
退院後のケア
レシピエントコーディネーターからみた患者と医療者間
の相互理解
コラム 心臓移植を待機している40歳代男性の想い
コラム 心臓移植から30年を経て、今思うこと
2-1 肺移植
1. 移植前における移植実施施設と非実施施設の連携
紹介のタイミング
移植適応評価
待機中の外来の役割
待機中における非実施施設の関与
待機中の患者に対するアドバンス・ケア・プランニング
伝えたい症例
コラム 移植実施施設間の連携、日本臓器移植ネット
ワークとの連携
2. 移植後における移植実施施設と非実施施設の連携
免疫抑制薬
感染症
自己モニタリングの重要性
妊娠・出産について
栄養・代謝異常など
悪性腫瘍
コラム 脳死下肺移植患者の想い
3. 移植人生における患者と医療者の相互理解
待機前から移植後慢性期に至る長期間管理
患者と医療者の相互理解
コラム さまざまな部署との連携で成り立つ移植医療
2-2 生体肺移植
1. 生体肺移植特有の患者と医療者の相互理解
生体肺移植患者の想い
生体肺移植ドナー
意思決定とそれぞれの想い
生体肺移植特有の問題
患者の意思が確認できない時
生体肺移植に係る費用、社会制度
生体肺移植を支える家族の協力体制
生体肺移植手術とリハビリテーション
維持管理
コラム 生体肺移植患者の想い
コラム 生体肺移植ドナーの想い
3-1 肝臓移植
1. 移植前における移植実施施設と非実施施設の連携
アドバンス・ケア・プランニングの重要性
非実施施設の役割と移植実施施設との連携
2. 移植後における移植実施施設と非実施施設の連携
非実施施設の役割と移植実施施設との連携
移植後管理の注意点
3. 移植人生における患者と医療者の相互理解
移植検討から移植決定、移植待機
移植後、急性期から一般病棟、退院へ
退院から長期外来管理
3-2 生体肝移植
1. 生体肝移植特有の患者と医療者の相互理解
生体肝移植ドナーの心理学的状態
ドナー手術に伴うリスクへの理解
生体肝移植におけるドナーの心情
インタビュー 生体肝移植後ドナーの想い
インタビュー 生体肝移植後レシピエントの想い
4-1 腎臓移植
1. 移植前における移植実施施設と非実施施設の連携
腎不全に対する治療法としての腎臓移植
移植実施施設への受診
移植待機
腎臓移植の費用
インタビュー 献腎移植登録後、20年以上待機
2. 移植後における非実施施設の役割
免疫抑制薬
感染症
退院後の生活
3. 移植人生における患者と医療者の相互理解
移植腎機能低下への心配
再発腎炎への心配
移植腎機能廃絶の時間経過
腎臓移植後の透析の可能性
移植腎機能が悪化した次の治療法
移植腎廃絶後の問題点
ドナーに移植腎機能の悪化を言えない
4-2 生体腎移植
1. 生体腎移植におけるドナーと医療者の相互理解
生体ドナーの要件 221
生体ドナーになるか迷っている時の相談相手
生体ドナーになれるかどうかの検査
待機中の管理
生体ドナー不適格の際の対応
腎臓提供後の腎機能
腎臓提供後の管理
腎臓提供後の心の問題
生体ドナー手術の実際
コラム レシピエントの私―生体ドナーになった夫
への想い
コラム 生体腎移植ドナーの立場から
コラム 生体腎移植レシピエントの立場から
5-1 膵臓移植
1. 膵臓移植と膵島移植
膵臓移植と膵島移植の違い
膵臓移植と膵島移植の両方の登録
2. 膵臓移植前における移植実施施設と非実施施設の役割
適 応
登録までの流れ
登録時の検査
登録から移植まで
3. 膵臓移植後における移植実施施設と非実施施設の役割
膵臓移植希望の患者数と移植順
待機期間
入院のタイミングと入院期間
治療成績
免疫抑制療法と注意点
拒絶反応
感染症予防と治療
通院、血糖測定、インスリン注射など
4. 移植人生における日常生活
食事、運動、性生活などの制限
費用と社会保障
5-2 膵島移植
1. 膵島移植前における移植実施施設と非実施施設の役割
膵島移植について
対象糖尿病患者
実施までの流れ
登録のための検査
待機期間中の留意点
2. 膵島移植後における移植実施施設と非実施施設の役割
膵島移植登録患者数
治療成績
免疫抑制療法
免疫抑制薬の注意点
拒絶反応への対応
感染症予防
食事、運動、性生活
通院、血糖測定、インスリン注射など
3. 移植人生における日常生活
膵島移植の待機期間
費用、社会保障
待機中の注意事項
入院期間
日常生活での注意点
社会復帰
結婚、妊娠・出産
6 小腸移植
1. 移植前における移植実施施設と非実施施設の連携
非実施施設からの紹介のタイミング
腸管リハビリテーションとは
待機中の非実施施設の関与
待機中の患者サポートと教育
非実施施設~移植実施施設~腸管リハビリテーションの例
2. 移植後における移植実施施設と非実施施設の連携
腸管リハビリテーションプログラムにおける非実施施設の役割
非実施施設における術後管理
患者からみた小腸移植
3. 移植人生におけるメンタルケアと日常生活
メンタルケア
日常生活
レシピエントコーディネーターの役割
● 付 録
1. 移植の方法
2. 費用と社会保障
丸善雄松堂では学校・団体
での電子取り扱いあり
臓器移植抗体陽性診療ガイドライン2023
[ 編 集 ] 日本移植学会
臓器移植抗体陽性診療ガイドライン策定委員会
[ 発行年 ] 2023年10月20日
[ 分 類 ] 臓器移植 ガイドライン
[ 仕 様 ] B5判 231頁
[ 定 価 ] 4,950円(税込)
[ ISBN ] 978-4-907095-80-2
[ 主な内容 ]
●臓器移植にかかわる移植医療者必読のガイドライン最新版
●血液型不適合移植についても記載
●臓器移植医療にかかわるあらゆる職種と患者、家族も対象
2015年秋に日本移植学会理事長を拝命した際、移植学会のミッションとして抗体関連 拒絶克服を掲げた。それまで血液型不適合研究会という全国組織の枠組みの中で腎臓移 植を手本として血液型不適合肝移植の標準化とリツキシマブの適応拡大を目指し活動して きた経験を活かし、日本移植学会として抗ドナー HLA抗体診療に必要な抗体検査、治療 法、戦術の確立を目指した。抗体検査は新たに内保連に加入して審査担当の先生方に丁 寧に説明することから始めた。リツキシマブとIVIGはメーカーとタッグを組んでPMDAの 門をくぐり、血漿交換の適応拡大は外保連のアンケートに書き込むことから始まった。 薬剤の適応拡大に関しては、実態調査と少なくとも一臓器における企業治験と他臓器に おける臨床研究または実態調査による有効性と安全性の確認が求められた。戦術を確立 するためにMinds診療ガイドラインに沿ったガイドライン作成を始めた。これらの仕事 は、日本移植学会内の委員会が担当した。資金は当初学会の自己資金で開始したが幸い にもAMEDの支援を得ることができた。「臓器移植抗体陽性診療ガイドライン2018年版」 はこの2017年採択AMEDの成果物である。
その後、日本移植学会として遺伝子多型情 報を基軸とした長期成績向上のための研究を立ち上げAMEDに2020年に採択された。 その研究事業の1つが「臓器移植抗体陽性診療ガイドライン2018年版」の改訂である。改 訂版には、最新の文献として2017年採択AMEDの成果物である日本の抗体陽性診療情 報が記載されることになることと血液型不適合移植に関しても記載することになっている。この本が、日本移植学会が求める「高いレベルの標準化」の具現に貢献し移植患者さんが健やかに過ごされることを期待する。
令和 5 年1月吉日
日本移植学会理事長 江川 裕人
「臓器移植抗体陽性診療ガイドライン 2018年版」が上梓されて5年が経過した。2023 年版ガイドライン策定の各委員は、可能な限り2017年以降に報告された文献に注目し てきた。臓器移植における抗体陽性にかかわる診療は、この5年間で進歩した領域もあるが科学的に停滞している領域もあり、2018年版CQに対するステートメントと変わらない領域も多い。しかし、今回の2023年版の大きな特徴は、2018年版にはなかった血 液型抗体に関する新たな記載を設置したことである。血液型不適合移植は本邦で推進された移植領域でもあり、また抗体陽性という意味では抗HLA抗体同様にガイドラインに 掲載すべきであると考え、これを推進した。
執筆者は熱意に溢れ、企画当初の予想を超える出来栄えと感じている。一部内容の重複や、章ごとに文章量の相違があることは、ご了承頂ければ幸いである。
本ガイドライン作成にあたり多大なご貢献をされた策定委員、協力者としてシステマティックレビューや解説の記載にご協力くださった方々、ガイドライン 統括委員の皆様に深謝する次第である。さらに、ガイドライン発刊に際し、多くのご助言とご協力を頂戴したぱーそん書房の山本美恵子様に感謝申し上げる。
最後に、本ガイドラインが日常臨床に役立つとともに、今後さらにエビデンスが蓄積され、より充実したガイドライン策定の礎となることを願うものである。
臓器移植抗体陽性診療ガイドライン策定委員長
移植学会医療標準化委員会委員長
佐藤 滋
臓器移植抗体陽性診療ガイドライン 2023策定委員
協力者 (Systematic Review and Writing)
ガイドライン統括委員
Ⅰ 臓器移植抗体陽性診療ガイドライン2023改訂について
A.改訂版の方針
1)対象と目的
2)手順と作業
3)ガイドライン構成
4)責任
5)作成資金
6)利益相反
B.推奨の強さとエビデンスレベル
C.略語一覧
Ⅱ 抗HLA抗体・non-HLA抗体
第1章 総論・抗体の定義
A.抗HLA抗体産生の機序
B.抗体の種類・特異性・検出時期による違い
1)抗体の種類
2)抗体の特異性
3)抗体の検出時期
C.HLA表記法とプロトコル
1)HLA 表記法
2)プロトコル
第2章 組織適合性検査
A.検査の歴史
B.組織適合性検査
1)HLA 抗体検査
2)クロスマッチ(リンパ球交差試験)
3)HLA タイピング
4)結果に影響する薬物と対処法
C.抗HLA抗体検査保険適応と算定条件
1)移植後の抗体検査 2018 年(平成30年)4月1日
2)移植前の抗体検査 2020 年(令和2年)4月1日
D.新たな解析法
1)C1q
2)C3d
3)IgG サブタイプ
4)エピトープ・エプレット解析
E.検査実施の現状
第3章 移植前抗体陽性
A.既存抗体陽性の臨床的意義
CQ3-1 既存抗体陽性は移植成績に影響するか
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ3-2 抗体の種類・nMFI などによって移植成績は
異なるか
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
B.既存抗体陽性への対応
CQ3-3 脱感作療法は有効か
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ3-4 どのような脱感作療法があるのか
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ3-5 どのような抗体陽性例で脱感作療法が必要か
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ3-6 脱感作療法の時期と評価法はどのように
すべきか
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ3-7 Preformed DSA は移植後消失することが
あるのか
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ3-8 Preformed DSA 消失後再度発生した抗体は
de novo DSA か
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ3-9 脱感作療法後に移植を回避する判断基準は
あるか
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
C.Non-DSA、non-HLA抗体陽性への対応
CQ3-10 Non-DSA や non-HLA 抗体陽性に
脱感作療法は必要か
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
第4章 抗体関連型拒絶反応
A.基準・定義
CQ4-1 Preformed DSA と de novo DSA では
予後は異なるか
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ4-2 De novo DSA 発生率は移植後経過期間で
異なるか
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ4-3 抗体の種類・nMFI などによって移植成績は
異なるか
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
B.診断法
CQ4-4 抗体関連型拒絶反応の診断に必要な検査項目
は何か
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
C.治療法
CQ4-5 治療介入・非介入の判断基準は何か
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ4-6 抗体陽性で治療非介入は予後不良か
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ4-7 抗体関連型拒絶反応の治療法は何があるのか
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ4-8 抗体関連型拒絶反応の治療評価はどうすべきか
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
CQ4-9 抗体関連型拒絶反応の治療評価時期はいつが
適切か
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
D.Non-DSA、non-HLA抗体陽性への対応
CQ4-10 Non-DSA や non-HLA 抗体陽性に治療介入
は必要か
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺] [小腸]
Ⅲ 血液型抗体
第5章 抗体検査法
A.総 論
1)ABO 血液型
2)血液型抗体価
B.検査法
1)血液型検査法
2)抗体価検査法
第6章 血液型不適合移植
A.抗体除去法(腎・肝)
CQ6-1 どのような除去療法があるか
解 説 [腎] [肝]
CQ-6-2 どのような症例で除去療法を実施するのか
解 説 [腎] [肝]
B.移植の適応(腎・肝)
CQ6-3 移植可否の判断基準はあるか
解 説 [腎] [肝]
C.血液型抗体による抗体関連型拒絶反応の診断(腎・肝)
CQ6-4 血液型抗体関連型拒絶反応の診断基準は何か
解 説 [腎] [肝]
D.血液型抗体による抗体関連型拒絶反応の治療(腎・肝)
CQ6-5 どのような治療法があるか
解 説 [腎] [肝]
E.予後(腎・肝
CQ6-6 血液型不適合移植は血液型適合移植に比べ
予後は異なるか
解 説 [腎] [肝]
CQ6-7 血液型抗体によって予後は異なるか
解 説 [腎] [肝]
F.腎・肝以外の臓器移植
CQ6-8 腎・肝以外の臓器で血液型不適合移植は施行
されているか
解 説 [膵] [心] [肺] [小腸]
G.ABO血液型以外の血液型不一致移植(全臓器)
CQ6-9 ABO 血液型以外の血液型不一致は移植可能か
解 説 [腎] [肝] [膵] [心] [肺]
Ⅳ 治療薬とアフェレシス
A.治療薬
1)保険適応薬
2)これからの適応薬
B.アフェレシス
丸善雄松堂では学校・団体
での電子取り扱いあり
必携 内科医のための
臓器移植診療ハンドブック
[ 編 集 ] 一般社団法人 日本移植学会
Transplant Physician委員会
[ 発行年 ] 2023年3月21日
[ 分 類 ] 臓器移植
[ 仕 様 ] B5判 本文266頁
[ 定 価 ] 6,600円(税込)
[ ISBN ] 978-4-907095-79-6
[ 主な内容 ]
●国内初の内科医のための臓器移植診療ハンドブックがここに‼
●「移植患者は診られない、わからない」からブラッシュアップ‼
●移植の基礎知識と診療の仕方についてわかりやすく解説‼
20世紀に急速に発展したScienceがもたらしたものに移植医療があります。この医療は自己でない臓器を自己体内で生着させることから、そのために基礎医学から臨床まで臓器横断的に広がるさまざまな知識が要求され、さらに臓器提供者(ドナー)の存在から始まる医療であるため、より高い倫理観が要求される医療です。そのため、この移植医療が粛々と行われることは、その国の社会および医療水準のバロメーターになると思われます。
わが国では、1997年の臓器移植法施行以来、医学界以外も含めた各方面の努力でさまざまな臓器における移植が実施されるようになり、各臓器移植後の成績は海外に比して良好であり、今では通常医療になったと言っても過言ではありません。
ここで移植には移植手術を伴うため、外科医の参画は自然ですが、移植適応、移植前管理から長期にわたる移植後管理については、その多くが内科的なものです。しかしながら、実際の内科医の参画はいまだ十分であるとは言えず、今後のわが国の移植医療の発展のためには、さらなる内科医の参画、つまり実地医家、研修医からの移植医療への参画が必須であると思われます。
本書は、2020年に発足した一般社団法人日本移植学会Transplant Physician(TP)委員会(委員長:布田伸一)の面々と、各臓器移植のエキスパートがこれからのわが国の移植医療の発展を願って書きあげたものです。
21世紀において、移植医療はますます発展し、その関連患者は増加の一途を辿るでしょう。先人たちが残した多くの業績を礎に、皆様の座右の書として、本書が、医療に携わる者のもつべきPhilosophyと先進医療知識を必要とする移植医療の実践に少しでもお役に立てますことを願っております。
2023年3月吉日
「必携 内科医のための臓器移植診療ハンドブック」編集委員長
布田 伸
第Ⅰ章 総論-臓器移植診療のための基礎知識-
1 各臓器移植の術式
2 レシピエントの年齢
3 移植実施施設と非移植実施施設の診療連携
4 レシピエントの発熱時の対応
5 上・下気道炎症状時の対応
6 嘔吐・下痢の対応
7 日常生活における外傷、けがへの対応、注意点
8 免疫抑制薬モニタリングの注意点
9 移植後感染症
10 移植後の日常生活と服薬の注意点、栄養および
代謝異常の管理
11 貧血の管理
12 移植と悪性腫瘍
13 ワクチン接種
14 ノンアドヒアランス、メンタルヘルスへの対応
15 小児移植後の成長と日常生活の注意点
16 小児移植医療におけるトランジション
17 妊娠可否とその注意点
第Ⅱ章 各論-臓器別にみる内科的管理-
1 心臓移植
1 移植適応申請に必要な内科的検査(適応基準)と
禁忌事項
2 移植待機中の内科的管理、注意点
3 移植待機中における補助人工心臓の管理、注意点
4 移植待機中から移植後の多職種チームによるケア
5 拒絶を疑う臨床所見と検査
6 移植後感染症の留意点
7 移植心の生理学的特徴と移植後の運動と
リハビリテーション
8 移植前後の日常生活の注意点、栄養および代謝異常の
管理
9 移植心冠動脈病変(CAV)の診断と治療
10 移植後に必要な免疫抑制薬以外の薬剤とその管理
2 肺移植
1 移植適応申請に必要な内科的検査(適応基準)と
禁忌事項
2 移植待機中の内科的管理、注意点
3 拒絶反応を疑う臨床所見と検査
4 移植後感染症の留意点
5 移植後に必要な免疫抑制薬以外の薬剤とその管理
6 移植前後における栄養管理と移植後の食事指導
7 移植後慢性移植肺機能不全の診断と治療
8 生体肺移植ドナーの管理
3 肝臓移植
1 移植適応申請に必要な内科的検査(適応基準)と
禁忌事項
2 移植待機中の内科的管理と重症肝障害への集中治療
3 移植前後の栄養管理、移植後の食事指導
4 拒絶を疑う臨床所見と肝生検
5 移植後のB型肝炎・C型肝炎・E型肝炎の管理
6 移植後に必要な免疫抑制薬以外の薬剤とその管理
7 移植後肝癌再発の予防と管理
8 移植臓器機能廃絶時のケア
9 生体肝移植ドナーの管理
4 腎臓移植
1 移植適応申請に必要な内科的検査(適応基準)と
禁忌事項
2 拒絶を疑う臨床所見と腎生検
3 移植後感染症の留意点
4 移植後に必要な免疫抑制薬以外の薬剤とその管理
5 移植前後における栄養管理と移植後の食事指導
6 移植後再発腎炎の治療法
7 移植臓器機能廃絶時のケア
8 生体腎移植ドナーの管理
5-1 膵臓移植
1 移植適応申請に必要な内科的検査(適応基準)と
禁忌事項
2 拒絶反応を疑う臨床所見と検査
3 移植後感染症の留意点
4 移植後に必要な免疫抑制薬以外の薬剤とその管理
5 移植前後の栄養管理と移植後の食事指導
6 移植後膵内分泌機能の評価
7 移植後耐糖能障害の再発に対する治療法
8 移植臓器機能廃絶時のケア
5-2 膵島移植
1 移植適応申請に必要な内科的検査(適応基準)と
禁忌事項
2 移植後のインスリン使用の必要性
6 小腸移植
1 移植適応申請に必要な内科的検査(適応基準)と
禁忌事項
2 移植待機中の内科的管理・注意点
3 拒絶を疑う臨床所見と検査
4 移植後感染症の留意点
5 移植後に必要な免疫抑制薬以外の薬剤とその管理
6 移植後の栄養管理と食事指導、ストーマ管理
付録 医療費、公的支援、社会保障について
丸善雄松堂では学校・団体
での電子取り扱いあり
臓器移植関連CMV感染症診療ガイドライン2022
[ 編 ] 日本移植学会
臓器移植関連CMV感染症診療ガイドライン策定委員会
[ 発行年 ] 2022年11月20日
[ 分 類 ] 臓器移植 ガイドライン
[ 仕 様 ] B5判 155頁
[ 定 価 ] 3,300円(税込)
[ ISBN ] 978-4-907095-78-9
[ 主な内容 ]
●臓器移植にかかわる移植医療者必読のガイドライン最新版刊行
●CMV感染症は臓器移植後、最も発症頻度の高いウイルス感染症
●臓器移植医療にかかわるあらゆる職種と患者、家族も対象
本ガイドラインの「はじめに」に記載しているように、CMV感染症は臓器移植後最も発症頻度の高いウイルス感染症の1つであり、臓器移植成績に影響を及ぼす可能性がある。また、治療薬はあるがワクチン接種による予防法は確立していない。
これまで、日本臨床腎移植学会から「腎移植後サイトメガロウイルス感染症の診療ガイドライン2011」が2011年10月発刊され、既に10年が経過している。さらに、2020年8月CMV核酸定量法(PCR法)が保険収載されたことにより、全臓器対象の本ガイドラインを作成する意義が高まったと認識している。
執筆者は熱意にあふれ、企画当初の予想を超えるでき栄え、と感じている。一部内容の重複や、章ごとに文章量の相違があることはご了承頂ければ幸いである。
本ガイドライン作成にあたり多大なご貢献をされた策定委員、協力者としてシステマティックレビューや解説の記載にご協力くださった方々、外部評価委員、ガイドライン統括委員の皆様に深謝する次第である。さらに、ガイドライン発刊に際し、多くのご助力を頂戴したぱーそん書房の山本美惠子様に感謝申し上げる。
最後に、本ガイドラインが日常臨床に役立つとともに、今後さらにエビデンスが蓄積され、より充実したガイドライン策定の礎となることを願うものである。
佐藤 滋 記
日本移植学会理事長 江川 裕人
医療標準化・移植検査委員会委員長 佐藤 滋
臓器移植関連CMV感染症診療ガイドライン策定委員
協力者(Systematic Review and Writing)
ガイドライン統括委員
第Ⅰ章 はじめに
1. ガイドライン策定にあたり
1) 対象と背景
2) 手順・作業
3) ガイドライン構成
4) 責任
5) 資金
6) 利益相反
2. 推奨の強さとエビデンスレベル
3. CMV核酸定量検査とreal-time PCR法の表記
4. 略語一覧
第Ⅱ章 CMV感染と感染症の分類・定義
1. CMV感染(CMV infection)
2. CMVの複製(CMV replication)
3. CMV初感染(primary CMV infection)
4. CMV感染の再発(recurrent CMV infection)
5. CMV再感染(CMV reinfection)
6. CMV再活性化(CMV reactivation)
7. CMV感染症(CMV disease)
第Ⅲ章 CMV概論
1. 序論
2. CMVの構造と機能
3. 感染経路と血清疫学
4. CMV発症リスクにかかわる宿主因子
第Ⅳ章 CMV関連薬剤
1. 保険適応CMV治療薬
1) 種類
2) 作用機序
3) 薬物動態・代謝・排泄
4) 副作用
2. 抗ウイルス薬開発から抗CMV薬へ
3. 新規治療薬の可能性
1) レテルモビル
2) Maribavir
3) Brincidofovir
4. 免疫によるCMV感染症発症予防
1) 抗体療法
2) ワクチン
第Ⅴ章 CMV感染の検査法
1. 血清学的検査
2. CMVの培養・分離
3. ウイルス迅速同定(シェルバイアル法)
4. CMV抗原血症法(CMVアンチゲネミア法)
5. 核酸定量法(PCR法)
6. 細胞・組織病理学的検査
7. 薬剤感受性試験
8. PCR法保険適応
9. アンチゲネミア法とPCR法の結果比較
1) アキュジーンm-CMV
2) コバス6800/8800システムCMV
第Ⅵ章 CMVによる臓器障害を伴う感染症
1・総論
1.CMV感染症
1) CMV症候群
2) CMVによる臓器障害を伴う感染症
2.治療総論
2・各論
1. CMV肺炎
2. CMV網膜症
3. CMVによる中枢神経障害(脳炎・横断性脊髄炎・
多発神経炎など)
4. CMV胃腸炎
1) 症状
2) 診断
3) 治療
5. CMV肝炎
1) 頻度
2) 症状
3) 血液検査所見
4) リスク因子
5) 診断
6) 治療
6. CMV心筋炎
7. CMV腎炎・膀胱炎
第Ⅶ章 小児CMV感染の特徴
1. 疫学
1) CMV感染の頻度
2) CMV感染の危険因子
3) CMV感染の間接効果
4) 免疫学的モニタリング
2. 治療・予防
1) CMV感染に対する予防戦略
2) 抗ウイルス薬の選択
3) 予防投与の期間
4) ウイルス量のモニタリング
5) CMV感染・感染症の治療
6) CMV感染により有効な免疫抑制薬やその他の製剤の選択
7) GCV耐性CMV
第Ⅷ章 臓器移植関連CMV感染への対応(臓器別)
1・移植前検査
■CQ VIII-1-1: 生体臓器移植前のドナー/レシピエントの
検査法は何か
解 説 [腎][肝][膵][肺][小腸]
■CQ VIII-1-2: 脳死下・心停止後臓器提供のドナー検査は
必要か
解 説 [腎][肝][膵][心][肺][小腸]
2・移植後感染モニリング
■CQ VIII-2-1: モニタリングの検査法と頻度はどうすべきか
解 説 [腎][肝][膵][心][肺][小腸]
■CQ VIII-2-2: モニタリングが不要になる時期はあるか
解 説 [腎][肝][膵][肺]
3・感染・感染症のリスク因子
■CQ VIII-3-1:CMV感染のリスク因子は何か
解 説 [腎][肝][膵][心][肺][小腸]
4・予防投与と先制治療の比較
■CQ VIII-4-1:感染症発症抑制効果はどちらがよいか
解 説 [腎][肝][膵][心][肺][小腸]
■CQ VIII-4-2: 予防投与・先制治療の終了目標は
解 説 [腎][肝][膵][心][肺][小腸]
■CQ VIII-4-3: 初回治療終了後の再治療開始の目安は
解 説 [腎][肝][膵][心][肺][小腸]
5・CMV感染症の好発時期
■CQ VIII-5-1: CMV感染・感染症の好発時期はいつか
解 説 [腎][肝][膵][心][肺][小腸]
6・移植臓器別治療法
■CQ VIII-6-1: 臓器別に治療法の違いはあるか
解 説 [腎][肝][膵][心][肺][小腸]
■CQ VIII-6-2:ガンシクロビル治療抵抗性CMV感染の対処は
どうするか
解 説 [腎][肝][膵][心][肺][小腸]
第Ⅸ章 SARS-CoV-2波及時の臓器移植後CMV感染
■SARS-CoV-2感染におけるCMV感染症併発について
第Ⅹ章 臓器移植後CMV感染の免疫機構への影響
1. ウイルス構造・ゲノム
2. 宿主免疫
3. 免疫回避・細胞死抑制
4. 臓器移植における影響