[ 主な内容 ]
●高次脳機能障害にかかわる医師や看護師、リハビリテーション関係職、福祉・介護分野の各職種等に必要な医学用語、また、支援にかかわる関連用語も含め、1,800余語を採録。
●高次脳機能障害にかかわるあらゆる知識をわかりやすく提供する、類書なき事典です。
高次脳機能障害は、その理解のためには極めて多くの知識を必要とする難解な領域である。その不思議な症状と一人ひとりまったく異なった障害像を前にして、自らの浅学をしばしば感じさせられることになるが、一方で知的好奇心も搔き立てられる。人間の多様な性質を特殊なかたちで際立たせてくれる、精神活動と脳の構造を明らかにする1つのアプローチとして学問的価値は高い。しかし高次脳機能障害は、一部の専門家のみが立ち入ることができる特殊領域ではない。現に、診断に始まりリハビリテーションから介護・社会的支援に至る、医師からリハビリテーション関係職、福祉・介護分野の各職種、そして本人・家族がそれぞれ役割を果たして高次脳機能障害者の自立を目指す活動が広く行われている。このように高次脳機能障害の臨床が幅広く展開されているわが国において、高次脳機能障害にかかわるあらゆる知識をわかりやすく提供することが求められ、本書が企画された。
本書の特徴は、高次脳機能障害の病態、症候にかかわる学術的知識ばかりではなく、背景になる解剖学、生理学、神経学、基礎心理学、臨床心理学、関連する精神障害、高次脳機能障害の診断、評価、検査の方法、治療、リハビリテーション、支援機器、社会的支援、介護、関係法規に関する用語を広く取りあげるようにした点である。取りあげた専門用語がこのように幅広く、用語の簡単な説明から、まとまった解説までその用語によって区分がある。またすべての項目を五十音順に配するのではなく、大項目の下に関連知識を配列した。用語を引くだけではなく、関連知識を系統的に得ることができる構成を目指した。神経内科、精神科、リハビリテーション科、心理士、言語聴覚士、作業療法士などの専門家の方々には支援にかかわる用語について、社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、相談支援員などの社会的支援・介護にかかわる職種の方は、症状、症候群とその基礎となる学問の用語について、本書を活用して知識を得て頂きたい。
本書の目的を理解して極めて多くの専門家に執筆頂いた。また編集協力者の方々には筆者とともに困難な作業を続けて頂いた。小嶋知幸先生には失語症を中心とした編集作業にご協力頂いた。ぱーそん書房の山本美惠子社長、編集担当の近野さくら氏には多大なる作業をお願いした。本書の出版のためにご尽力を頂いたこれら多くの方々にこの場を借りてお礼を申しあげたい。
しかし、本書の壮大な目的の前に編集代表者の知識不足による不備も多いことと思われ、また編集作業においてしばしば無理なお願いをさせて頂いた。深くお詫び申しあげたい。
2018年12月吉日
種村 純