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外来で役立つ
甲状腺疾患診療の手引き 増補
―非専門医のために―
[ 著 ] 石丸 忠彦
[ 発行年 ] 2023年10月13日
[ 分 類 ] 内分泌・代謝
[ 仕 様 ] A5判変形 168頁
[ 定 価 ] 3,080円(税込)
[ ISBN ] 978-4-907095-85-7
[ 主な内容 ]
●臨床に役立つ要旨を1冊にまとめて網羅。
●「ポイント」「メモ」を数多く記載。
●甲状腺疾患診療の手引きに最適!!
今回、増補版を出版するにあたり、追記・改変しましたのは以下の内容です。
診断ガイドライン、厚労省の重篤副作用疾患別対応マニュアルと抗甲状腺薬の添付文書が2022年、改訂されました。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う甲状腺疾患とがん治療に用いる免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による甲状腺機能異常症の臨床像が次第に明らかになり、発症機序が解明されつつあり、トピックの1つとなりました。ほかに、バセドウ病眼症の新しい治療薬の臨床応用や抗甲状腺薬の新たな副作用の報告などがありました。索引が充実しているとの読者の声があり、さらなる充実のために加筆致しました。本書が甲状腺疾患診療時の手引きになれば幸いです。
増補版出版にあたり、ご指導と助言を賜わりました長崎大学病院国際ヒバクシャ医療センター教授 宇佐俊郎先生と長崎大学病院内分泌・代謝内科・第一内科/放射線影響研究所長崎臨床研究部 副部長 今泉美彩先生に深謝致します。また、琉球大学内分泌代謝内科教授 益崎裕章先生、前福岡大学内分泌・糖尿病内科教授 柳瀬敏彦先生、東京都医師会理事・大橋内科クリニック院長 大橋 誠先生、虎の門病院内分泌代謝科部長 竹下 章先生ほか、助言を賜わりました先生方に厚く御礼申し上げます。増補版出版のお願いを快諾され、編集・校正に尽力された(株)ぱーそん書房の山本美惠子社長に厚く御礼申し上げます。
献呈の辞:本書の完成を楽しみにしながら、47歳で急逝した愛娘・髙野恵美に献げます。
令和5年10月吉日
石丸 忠彦
この度、長崎でご開業されていた石丸忠彦先生から「外来で役立つ甲状腺疾患診療の手引き―非専門医のために―」が上梓されました。石丸先生とは、学会で何度かお話をさせて頂いたことがありますが、甲状腺疾患の臨床に関することで、簡単そうに見えて答えることが難しい質問を幾度か頂いたことがあります。そのような臨床的に非常に重要で、かつ、専門医を悩ます問題に真摯に向き合って書かれたのがこの本です。内容は甲状腺ホルモンの基礎知識、甲状腺疾患診療のための基礎知識、代表的な甲状腺疾患の診断と治療、特殊な甲状腺疾患についての4章に分けられており、腫瘍性疾患以外はすべて網羅されています。信頼できる最新の研究結果に基づき実際の臨床における手順どおりに記載され、また、多くの図表が引用されて読者が理解しやすいようになっており、初めて甲状腺疾患を診療する医師でもこのとおり行えば正確に診断、治療が行えると思われます。
甲状腺疾患は、苦手意識をもたれる臨床の先生方が多いようですが、この良書によって身近なものになることを切に願います。
令和3年11月吉日
伊藤病院 内科部長 元日本甲状腺学会 会長(2016年) 吉村 弘
甲状腺疾患は外来患者さんの中に、意外に多く潜んでいます。バセドウ病の有病率は人口1,000人あたり0.2~3.2人です。甲状腺自己抗体の保有率は人口の15%程度と高く、検診でエコー検査を行うと、約20%に甲状腺結節が発見されると言われています。
甲状腺疾患の発見は、その気になれば難しいことではありません。患者さんの不定愁訴を組み合わせると、発見の糸口が見つかります。また、通常の血液検査の中にも甲状腺機能異常を疑うヒントがあります。甲状腺疾患の診断は思ったほど難しくはありません。診察室で、目の前の患者さんを診て、甲状腺疾患の可能性を想定し、甲状腺関連の血液検査を行い、その結果を読み解くと診断できます。また、甲状腺疾患の多くはクリニックで治療可能です。
筆者は自院閉院後、先輩医師に内分泌疾患の診療を依頼されたのを機会に、頻度の高い甲状腺疾患から勉強をし直しました。現在、使用されている甲状腺疾患の主な治療薬は、抗甲状腺薬と甲状腺ホルモン薬で、筆者が甲状腺学を勉強し始めた50年前と同じです。その分、取り組みやすく、容易に知識の整理ができました。
甲状腺疾患の診断と治療に関しては、ガイドラインや甲状腺疾患関係の書籍などで、おおよそのことはわかりますが、1冊の書籍を読んだだけでは筆者が知りたいことは十分に記載されていませんでした。そこで、10冊近くの書籍を読み、新たに得た知識と今までの臨床経験に基づいた要旨を、長崎県医師会報の「学術寄稿」に投稿した際に、筆者の「学術寄稿」を甲状腺疾患診療時に参考にしている学友が、単行本にまとめたらと提案してくれました。
本書は2018年10月より2020年10月まで連載された「学術寄稿」を大幅に加筆・編集したものです。疾患の説明は独立した章ごとに記載され、1つの章で完結しています。したがって各疾患群で説明の内容が一部重複したところがあります。重複した箇所は、いずれも重要な部分なので、重複のまま掲載致しました。
本書の構成は、冒頭に甲状腺疾患の診断と治療に必要な基礎知識を説明し、次いで代表的な甲状腺疾患と特殊な甲状腺疾患について述べてあります。読みやすいように「ポイント」「メモ」「まとめ」を入れました。日常診療で最もよく遭遇するバセドウ病と甲状腺機能低下症については、診断面ではガイドラインの説明を補足し、治療面では抗甲状腺薬と甲状腺ホルモン薬の使い方を詳述しています。8年ぶりに改訂された「バセドウ病治療ガイドライン2019」では、内科医がよく使用する抗甲状腺薬の使用法がエビデンスの集積で大幅に変更・追記されました。本書には「バセドウ病治療ガイドライン2019」を参考にした抗甲状腺薬の使用法の最新情報が掲載されています。内科医向けに記述しましたので、甲状腺癌については触れておりません。
甲状腺疾患の診断・治療に必要なことを書き留めた本書が、甲状腺疾患診療時の手引きになれば幸いです。
令和3年11月吉日
石丸 忠彦
Ⅰ 甲状腺ホルモンの基礎知識
A. 甲状腺ホルモンの種類
B. 甲状腺ホルモンの合成・貯蔵とサイログロブリン
C. 甲状腺ホルモンの末梢での代謝
D. 甲状腺ホルモンの分泌調節(フィードバック機構)
E. 甲状腺ホルモンの血中存在様式と遊離型甲状腺ホルモン
F. 甲状腺ホルモン結合蛋白の役割
G. TBG異常症を疑うとき
Ⅱ 甲状腺疾患診療のための基礎知識
A. 甲状腺疾患は一般外来で意外に多い
B. 甲状腺疾患の診断は難しくない
C. 甲状腺疾患を疑うヒント
D. 甲状腺ホルモンの作用と甲状腺機能異常の症状について
E. 甲状腺機能異常と主な関連疾患
F. 甲状腺疾患の診療の進め方
column 1 健常者の甲状腺は触診で触れるのか?
正常甲状腺とは?
G. 甲状腺関連血液検査の選択と読み方
H. 甲状腺超音波画像の読み方
Ⅲ 代表的な甲状腺疾患の診断と治療
[ 1・甲状腺中毒症 ]
A. 甲状腺中毒症と甲状腺機能亢進症は同じではない!
B. 甲状腺中毒症をきたす病態
C. 甲状腺中毒症の鑑別に役立つ問診と臨床症状
[ 2・バセドウ病 ]
A. バセドウ病の診断
B. バセドウ病診断時の留意点は?
C. バセドウ病の治療
D. 抗甲状腺薬による治療
E. 抗甲状腺薬の副作用について
column 2 メルカゾール〇(R)の添付文書
(2015年10月改訂)に問題あり!
F. 抗甲状腺薬以外の治療薬について
G. 特殊なバセドウ病をどうするか?
H. バセドウ病患者に生活制限が必要か?
I. 専門医に紹介すべきバセドウ病患者とは?
column 3 「バセドウ病治療ガイドライン2019」
―どこが変わったのか? 2011年版との対比
[ 3・破壊性甲状腺炎 ]
1. 亜急性甲状腺炎
A. 病因:ウイルス感染による甲状腺の破壊による
B. 症状・徴候:急性上気道炎症状が先行する
C. 診断と鑑別診断
D.治療
E.亜急性甲状腺炎による甲状腺中毒症の経過と予後
2. 無痛性甲状腺炎
A. 成因は自己免疫異常による甲状腺の破壊
B. 症状は甲状腺ホルモン濃度により変わる
C. 診断について
D.鑑別すべき疾患は?
E.治療
F.予後
[ 4・妊娠性一過性甲状腺機能亢進症 ]
A. 頻度
B. 症状は軽度のことが多い
C. 診断と鑑別診断
D.治療が必要なとき
[ 5・中毒性結節性甲状腺腫(プランマ―病) ]
A. 頻度
B. 症状は軽度のことが多い
C. 診断
D. 治療
[ 6・甲状腺機能低下症 ]
1. 原発性甲状腺機能低下症
A. 原発性甲状腺機能低下症を起こす原因
B. 原発性甲状腺機能低下症の診断
C. 原発性甲状腺機能低下症の治療
2. 中枢性甲状腺機能低下症
A. 中枢性甲状腺機能低下症を起こす原因
B. 中枢性甲状腺機能低下症の診断
C. 中枢性甲状腺機能低下症の治療
[ 7・慢性甲状腺炎(橋本病) ]
A. 慢性甲状腺炎(橋本病)の診断時の留意点
B. 慢性甲状腺炎(橋本病)の治療とフォローアップ時の留意点
C. 慢性甲状腺炎(橋本病)の治療
D. 慢性甲状腺炎(橋本病)が妊娠に及ぼす影響は?
E. 慢性甲状腺炎(橋本病)の妊娠前・妊娠中の
甲状腺機能管理について
F. 予後
[ 8・潜在性甲状腺機能低下症 ]
A. 潜在性甲状腺機能低下症とは何か? その定義は?
B. 病因と頻度
C. 症状
D.診断と鑑別診断
E.治療
F.予後
Ⅳ 特殊な甲状腺疾患について
[ 1・緊急性の高い甲状腺疾患 ]
A. 甲状腺クリーゼ
B. 粘液水腫性昏睡
C. 抗甲状腺薬による無顆粒球症
D. 気道閉塞で窒息の可能性のある病態
E. 甲状腺中毒性周期性四肢麻痺
F. 心不全
[ 2・低T3症候群、non-thyroidal illness(NTI:非甲状腺疾患) ]
A. 低T3症候群、NTIとは?
B. 基礎疾患・病態とT3低下の機序
C. 症状と血液検査の異常
D. 診断と鑑別診断
E. 治療と予後
[ 3・ 妊娠と甲状腺疾患 ]
A. 妊婦の甲状腺疾患の頻度
B. 妊娠に伴う甲状腺機能の変動について
C. 妊娠初期に見られる妊娠性一過性甲状腺機能亢進症とは?
D. バセドウ病と妊娠について
E. 甲状腺機能低下症と妊娠について
[ 4・ 出産後の甲状腺機能異常 ]
A. 出産後甲状腺機能異常は日本人が最初に報告した
甲状腺疾患である。その概念と病態は?
B. 経過と症状は血中甲状腺ホルモンの変動で変わる
C. 診断
D. 治療は病型により異なる
E. 出産後の甲状腺機能異常の経過は?
フォローアップをどうするか?
[ 5・薬剤性甲状腺機能異常 ]
A. 甲状腺機能異常をきたす薬剤の作用機序は?
B. 薬剤による甲状腺中毒症の発生機序について
C. 甲状腺機能異常をきたす代表的薬剤について
D. 薬剤性甲状腺機能異常の早期発見のために
E. 薬剤性甲状腺機能異常が生じた場合の対応は?
[ 6・加齢と甲状性疾患 ]
A. 甲状腺機能の加齢による変化について
B. 高齢者のバセドウ病について
C. 高齢者の甲状腺機能低下症について
D. 高齢者の潜在性甲状腺機能低下症について
[ 7・COVID-19と甲状腺疾患 ]
A. COVID-19による甲状腺疾患
B. COVID-19ワクチン接種後の甲状腺疾患